「ヒマラヤ アルパインスタイル 苦しみの芸術」3
ピオレドール受賞について
ピオレドールを受賞した佐藤祐介、平出和也、一人おいて谷口けい、天野和明
天野:ぼくらはカランカ北壁に登ることができ、それが評価されて去年にはソウルでピオレドール・アジアという賞をいただくことができました。今年はフランスで本家ピオレドールにノミネートされ、ぼくと祐介が行ってきたのですが、結果として賞をいただくことができました。二人はアラスカとカランカでダブルノミネートされて、アラスカはもらえなくてカランカはもらえたわけですが、それについて思うことは?
佐藤:アルパインクライミングの良さというのは、コンペみたいなもので決めるのは難しいし、意味がないことです。ぼくが2008年にやった登山では、アラスカとカランカ、それと正月の黒部横断もすごく大きな山行で、どれが一番良いかと決められないです。カランカが一番良かったというわけではないですが、ピオレドールではカランカが一番良かったということになるわけです。そういった矛盾を抱えながら審査され、受賞受けるということになるのはしょうがないのかなと。ピオレドールは1位を決めるということにはならなくて、複数隊を賞に選びました。でも、賞自体よりもいろいろなクライマーと会えたし、一緒に登ることもできました。そういう機会を与えてもらって、自分の世界を広げることができて良かったと素直に思っています。
一村:今回のピオレドールは不本意だったので行きませんでした。カランカの場合、正面ダイレクトを登ろうとして行ったのに登れず、右を巻いてしまったのが不本意だという一番の理由です。それに過去のピオレドールでノミネートされた隊の記録を見ると、ぼくらのアラスカもカランカも非常に劣っているので。隊として拒否するものではないので、ぼく個人としては拒否しました。
佐藤:いやぁ、始めて聞いた(笑 インドでだったか、「ピオレドールもらったぜ!」みたいなこと言って喜んでいたよね(笑
一村:はい、言ってました(爆笑
天野:ぼくも祐介が言ってたように、招待されて無料で行って、普段泊まれないようないいホテルに泊まれた。それ以上にワルテル・ボナッティやダグ・スコットなんて、神様みたいな存在の人たちと直接話せたのが楽しかったです。
佐藤:彼らと一緒にアルプスで登れたのは良かったです。
天野:ぼくらは登ったルートに「BUSHIDO(武士道)」という名前を付けたのですが、これはなんででしょうか
一村:ぼくは山登っている上で一番大切なのは魂だと思っているので、日本の魂を忘れるなと言う意味で付けてみました。
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