10月に原宿のザ・ノース・フェイス 3で開かれた優勝祝賀会。ここで野口選手は今年のワールドカップを振り返り、「カナダ大会の前、もう優勝できないのではないか、これで勝てないなら引退しようかとすら思った」と述べた。運命をかけたカナダ大会で、何が起きたのだろうか。
「今年のワールドカップ、1戦目から4戦目まで、惜しいところまでは行けたのだけど集中できませんでした。優勝できるイメージもなくて。それがカナダ大会は、準決勝あたりから吹っ切れ、あまり優勝にこだわらなくなっていましたね。やれることをやっていこうと」
準決勝で野口選手はただ一人全課題を完登し、1位で決勝戦に進んだ。
「決勝でもまったくプレッシャーを感じることなく、ただ自分のクライミングだけに集中できました。3課題目が終わったところで、自分が暫定1位ということに気がつきました。あと1課題登れば優勝です。そして、最後の課題は自分でも信じられないぐらい簡単に登ることができました。さすがに終了点を両手でつかんだ瞬間は全身が震えました。ずっと勝てなかった葛藤から解放されたんだと。自然と涙が溢れました。私が勝てたのは、自分の好きなように登ること、順位への執着を捨て、リラックスして自分本来のクライミングができたからでしょう」
2007年ぐらいから、ずっと上り調子だった彼女が停滞していたのは、何か理由があったのだろうか。
「決してトレーニング不足では無かったです。自分がダメだったというのではなく、年々ワールドカップのレベルがあがってきて、ベストを尽くしても優勝できるほど自分が強くなかったというだけだと思います」
ワールドカップの傾向と自分のズレもあったという。
「私はダブルダイノなどコーディネーション系のムーブがもともと得意ではありませんでした。そういう課題が年々増えてきていて、自分の傾向とワールドカップの傾向が明らかに離れているな、とは感じていました」
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