壁にあるホールド(手がかり・足がかり)を、自分の手足だけ使って登るフリークライミング。競技(コンペ)には安全確保のためにロープを用いるリードと、ロープ無しで比較的低い壁を登るボルダリングなどがある。その頂点はIFSC(国際スポーツクライミング連盟)が主管するワールドカップと世界選手権だ。野口啓代さんは、08年ボルダリング・ワールドカップで優勝。リード・ワールドカップでも入賞を重ね、08年から新設されたワールドカップ・オーバーオール部門で初代チャンピオンの座を射止めた。今や世界最強女性クライマーの一人だ。彼女のワールドカップ優勝までの道のりと、過酷なトレーニング、そして将来の夢について語ってもらった。
高校1年生、16歳になってから毎回ワールドカップに出場してきた野口さんは07年のワールドカップにおいてボルダリングで銅メダルと銀メダルを、世界選手権でもボルダリングで銀メダルを獲得。08年はボルダリング・ワールドカップでの年間優勝を目標とした。
まずオーストリアでの開幕戦は4位入賞。フランス領レユニオン島で2位、スイスで3位と入賞を続け、表彰台の中央に立つのは時間の問題と見られていた。ところが6月のイタリアでは予選を1位で通過しておきながら、準決勝戦はまさかの10位敗退。過去最低の結果に、父親に国際電話をかけ「日本に帰りたい。チケットを手配して欲しい。もうコンペに出たくない」と泣きついたと、自身のブログで告白している。
だがその2週間後、7月にフランスのモンタウバンで開催された第6戦で、野口さんはついに初優勝の栄冠を掴む。日本人選手のワールドカップ優勝は2000年リード種目の平山ユージさん以来、女子ではもちろん初めての快挙である。
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