ヨーロッパで各地の岩場やジムを回り、現地の選手と交流してみて、クライミングの環境が日本より非常に恵まれていることを実感したという。
「ヨーロッパはクライミングが盛んですし、代表レベルになると監督が選手に一対一で付いているのがうらやましいです。日本では監督がおらず、トレーニング方法は各自が模索している状態です」
日本における選手の層の薄さも気になる。中学女子は強豪選手がひしめき合っているのだが、高校生世代の女子にブランクがある。
「一緒にワールドカップで決勝を目指す強い女子が欲しいですね。どうしても一緒に登るのが男性ばかりになってしまいます。時々小林由佳さんとも登ったりしますが、いつもというわけにもいかず。身近に私よりも強い女性がもっといたらいいですね」
現在の女子で、野口さんより強いクライマーというと、そういないような気もするが。
「ヨーロッパは層が厚いです。ワールドカップではオーストリアの選手が上位を占めているのですが、この人が優勝しなければこちらの人が優勝するといったような状況です。そういうレベルどうしで普段から一緒に登っていれば強くなるでしょうね。日本では、高校生ぐらいで世界をめざしてがんばろう、という子がいないのかな。もっと出てきて欲しいですね」
08年4月に入学した東洋大学だが、のべ3か月のヨーロッパツアーでほとんど出席できず、9月で辞めてしまったという。将来はどんな職業を考えているのだろう。
「25歳とか30歳になったらワールドカップで勝てなくなるでしょう。そうしたら、監督やコーチとして教える側になって、恩返しをしたいですね。クライミングをいろんな人に広めたいというのもあるし、ワールドカップやワールドユースに出る人に今まで私が教わってきたことをフィードバックしていけたらいいですね。日本全体のレベルが上がって、世界で活躍して欲しいです。ヨーロッパとの比較でも言いましたが、監督とかコーチといった、選手を支える体制がまだまだ日本はしっかりしていません。監督がいないということは他の国から見てかなりハンデになります。監督は絶対に必要な存在なので、そういう役目の人がいて、若い世代が育ってくれればいいですね。将来は教える立場になりたいです」
2012年は無理だが、将来的にはオリンピック種目にクライミングが採用される可能性もある(IFSCは国際オリンピック委員会加盟団体)。そのとき、野口さんが指導する若手クライマーたちが活躍することになるかもしれない。だが、そんな遠い先のことはともかく、09年も表彰台の中央に立つ野口さんの姿を期待したい。
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