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クライミングのトレーニング 悪い「刷り込み」を避けよう

菊地敏之氏

 最近、自分の講習会などでよく「刷り込み」という言葉を使っています。悪い動きをすればどんどん悪い刷り込みがされて、ますます悪くなっていく。伸び悩んでいる人は、悪い動きを刷り込み過ぎているのではないかと思います。

 悪い刷り込みの3大要素というのがあるんですが、一つは力で引き付ける動き。懸垂や、力任せのボルダリングを一生懸命してきた人がクライミングをすると、ホールドを取った瞬間に引き付けてしまう。これは悪い動きなんです。腕を伸ばして脚で身体を上げていくのが一般的にいいムーブなんですが、なんでもかんでも引き付けてしまう、もしくは腕に目いっぱい力を入れてしまう。

 もう一つは「旗の動き」。クライミングは対角線バランス、つまり右手でホールドを持っていたら左足、左手ならば右足で体を支えるのが基本なんですが、左手左足で体を保持して右手を出してしまう人が案外多い。実はジム、特にボルダリングにはこういう課題が多いんです。なぜなら自然な動きで取りに行くと簡単だから、自然な動きを阻害するような課題を作るのです。で、そういうのばかりやっていると、いざ核心に入ったときとか腕がパンプした時、悪い動きが出てしまいます。

 そして三つ目は「張ってください」ですね。ロープを張ってくださいとか、すぐ落ちる。これも悪い刷り込みです。落ちまいとする体の反応ではなく、落ちるという反応ばかりを身体に植え付けてしまう。何回も同じルートで落ちる人、ワンテン地獄にはまる人というのは、この悪い記憶が身体に染みついてしまっている。

 いずれにしてもこうした悪い動きの記憶、「刷り込み」から脱却するのは非常に大変です。いい動きをその倍から3倍くらいやらないと悪い動きを払拭できません。

粗形態から精形態へ

 正しい動きをやることを、負荷を強くするより意識した方がいいですね。5.11dが登れるとすぐ5.12aに進みたくなるのは分かるのですが、5.11dをちゃんといい動きで登れるかどうかの方が大事です。『クライマーズ・ボディ』の78ページに書いてある「粗形態の発生と定着、精形態の発生と定着 運動の自動化」、ここ大事です。テストに出ます(笑)。

 精形態というのは精密な形態ということ。粗形態というのは粗雑な形態ということです。おそらく初めてのグレードを登った時は、皆さん粗形態で登っています。力任せのむちゃくちゃな動きで、足がぶらんとなってしまったけど、なんとか登れた。10回ダメで、たまたま11回目に落ちなかったから登れた、というトライの仕方をしている人が多いと思います。

 もちろん登れたのはいいことです。一つのグレードを獲得したということで、うれしいし自信にもつながります。

 でも、次にやらなければいけないのは、動きをもっと洗練させることなんですね。

 5.12aが1本登れたから5.12bに進む、といったことはやらないほうがいいです。たとえばジムにある5.12aを全部登る。あるいは1日に5.12aが落ちずに3本登れたら5.12bに進む、というようにした方が良い。
 一度登れたルートを二度と登らない人が多いけど、うまくなるのは2回目からです。1回目でうまくなるのは、よほど才能のある人じゃないとできないと思います。特にジムでは、同じルートを2回目に登ってはじめて上手くなる、3回目に登る時にさらにうまくなります。というのは、もっといい動きというのが2回目、3回目に理解できるんです。この前はこうしたけれど、ここは腰をもう少しこちらに動かした方が楽だなとか、ここではこんなに力が抜けるとか、そういうことがだんだん分かってくるのです。
 そういうトレーニングをやっていると、それが蓄積され、自動化される。オンサイトのときでも同じように動けるんです。

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